Vol.3では、夢をかなえるために渡ったオランダでの思い出をお伺いしました。
Vol.4では、オランダでのトレーニングを振り返ってお話しいただきます。
ところで、何年オランダに居たのでしょう?
5年です。
最初の3ヶ月は、テスト期間と言われました。
3ヶ月見て良ければ、1年預かると言われました。
3年やれば、日本でトレーニングする10年に匹敵すると言われました。
このトライアウト、石にかじりついても残ってやると思いました。
1年で3年分です、確かに匹敵すると思います。
1日に日本で行う3倍以上の練習をするのですから(笑)
自分なりに作った103キロが、あっという間に83キロに落ちました。
身体がいつも回復を欲していましたね。
格闘技は、体力や技術だけで勝てる競技とは違います。
最後には強い気持ち、マインドがものをいいます。
先生は過酷なトレーニングから、それを学ばせてくれました。
そして魔法のような言葉で私に力をくれました。
厳しいトレーニングを課しながらも、先ほどのけんかの後のお話のように、大きな思いやりのこもった行動と言葉で、お二人を励まして下さっていたんですね。
でもそんな過酷なトレーニングの毎日で、「もう帰りたい!」と思ったことは無かったですか?
ヨハン先生は、弱音を吐かない方で、
いつも前だけを見ていました。
私も弱音を吐くことは嫌いですが、数回ありました(笑)
しかしそれ以上にあの場所にいられた喜びでいっぱいです。
ヨハン先生はなにが凄いか、とにかく前向きで凄いです。
私はある時、試合の数日前に怪我をし、「なんてことだ。これでは闘えない。悲しい。悔しい」と絶望で打ちのめされていました。
それまで私は「自分のことを一番信頼できるのは自分しかいない。
やるんだ」と思っていました。
その私が怪我により自分を信じられなくなっている。
ダメだと思いました。
しかしそんな時、私を救ってくれたのはヨハン先生でした。
「ヒロシなら大丈夫。私は信じている。お前が光り輝くことを。」
...私は自分以上に自分を信じてくれる人がいるのかと驚き、感謝し、奮えました。
「自分のことを自分以上に信じてくれる人がいる。」そう思えたらより強くなることができたのです。
そして心から、こんな人になりたいと思いました。
先生の素晴らしさは、弟子の私たちを信じて疑わないことです。
例え、私が私を信じられなくなっても先生だけは私を信じてくれる。
そう思うと不思議と力が湧いてくるものです。
私は異国で最高の出会いをし、真の男の優しさを見ました。
お話を伺っていると、ヨハン先生は人間離れした、神様のような方と言う印象を持ちます。
厳しいだけではない、でも優しいばかりでもない、それでいて的確に相手の心を包んで行動できる。
こんな素晴らしい先生の下に居たら、「もういやだ」とか「帰りたい」とは思わないですよね。
オランダに行って素晴らしい出会いがあったようですが、「日本と比較してオランダの方が良いな」と思った事はありますか?
日本には日本の素晴らしさがあります。
外国にも外国の素晴らしさがあります。
世界に出て、その物事のとらえ方が勉強できたことが良かったことです。
格闘技も同じですね。
格闘技はどの武道も最強を求め突き進んできましたが、キックが最強とか空手が最強とかサンボが最強とか、いや柔術が最強だとかはありません。
それぞれいい部分があるのです。
ですからいくつになっても子供の様に頭を柔らかくし、良いものを取り入れれば、自ずと最強の技術が、完成します。
先生はボステクニックをその様にして作りました。
拒絶するのではなく受け入れる。
良いものは良いと取り入れる。
それがボス ジムです。
やはり海外に出る良さの1つは、広い視野を持てるようになる事ですよね。
Hiroshiコーチが語ってくれたような考え方を、格闘技に限らず色んな事にあてはめて考える人が増えれば、もっと世界が平和になる気がしますね。
そんな風に素晴らしかったオランダでのトレーニングですが、もう1度オランダでトレーニングして来いと言われたら?
正直お腹がいっぱいです。
だれが厳しい内弟子時代の練習を、年齢がいってから5年間も行うことができるでしょう?
そんなに優しい練習はしてきてません。断固お断りします。
しかしもう一度10代に戻れるなら、間違いなく先生の元へ修行に行きます。
現在は2-3週間ぐらいの合宿なら大丈夫です。
きっぱりお断りと言うことですね。(笑)
でもそれは、どれだけ練習が厳しかったかと、どれだけ全力でやっていたかを物語っていますよね。
では、これから「オランダへ行って格闘技の修行して来たい!」と言う人が居たら?
すごい世界が見れるので、良いと思います。
ただしヘビー級に限ります。
軽、中量級ならばパートナーはボス ジム ジャパンにいるのでうちに来てくれれば大丈夫です。
オランダでは軽、中量級選手は多くないので余りオススメしません。
ヘビー級ならばスパーリングパートナーが何十人といます。
また何の世界にしろ、世界を見ることは視野を広げるのでいいことだと思います。
踏み出す勇気、行動力です。
その際できれば超一流の世界に入ってみてください。
見えなかったものが見えると思います。
なるほど。
オランダの選手は大きいので、ヘビー級の修行向きと言うことですね。
オランダでのお話を伺うにあたり、「オランダで良かったことは、間口が高くて、日本のように頭を打たないこと」などと面白いお話になるかと思っていましたが、全く想像を絶する素晴らしいお話が聞けました。
Vol.5 では厳しいトレーニングの末に出場した、試合のお話を伺おうと思います!